つくば市北条にある旧矢中家住宅が、国の重要文化財に指定されることが決定しました。国の文化審議会は23日、文科相に答申し、官報に告示された後、正式に指定される予定です。
旧矢中家住宅の概要
旧矢中家住宅は、昭和初期の近代和風建築であり、約2500平方メートルの広大な敷地に本館(居住棟)と別館(迎賓棟)の2棟が建っています。実業家であり、建材研究家でもある矢中龍次郎氏が、1938年から53年にかけて自宅として建築しました。
この住宅は、龍次郎氏が「理想というべき木造のモデル住宅」を目指して設計した実験的な建物で、木造建築を基本としながら石造やコンクリート造なども取り入れています。特筆すべきは、木造建築では珍しい平らな「陸屋根」や、龍次郎氏自身が発明した防火板などの近代的な材料の使用です。また、建物内部も和洋折衷の様式で、色鮮やかな杉戸絵やふすま絵、水墨画などが飾られ、銘木もふんだんに使われています。周辺住民からは「矢中御殿」と呼ばれるほど豪華絢爛な造りで、上流階級の邸宅としても優れた特徴を持っています。さらに、当時の調度品や設備もそのまま残されています。
住所 | 茨城県つくば市北条古城94−1 |
建築年 | 1938年〜1953年 |
設計 | 矢中龍次郎(1878〜1965) |
敷地面積 | 約2500平方メートル |
公式サイト | https://www.yanakanomori.org |
有形文化財から重要文化財へ
この旧矢中家住宅は、2011年には登録有形文化財として登録されており、その歴史的価値が認められてきました。今回、実験的な住宅としての学術的な意義や、意匠的な優れた特徴が再評価され、国の重要文化財に指定されることとなりました。
国の重要文化財に指定されるのは、本館と別館の2棟です。本館は木造平屋建てで、1942年に建築されました。また、別館は2階建てで、1階は鉄筋コンクリート造、2階は木造です。このほか、敷地内の石塀、石積、擁壁、横井戸も指定の対象となります。
つくば市にとっては、国指定文化財としては8件目の指定となり、建造物としては2件目の指定となります。
旧矢中家住宅は、NPO法人「矢中の杜」が管理運営をしており、毎週土曜日に一般公開しています。今回、国の重要文化財に指定されることで、今後も保護と活用が進められることでしょう。